岩波新書『高木貞治』(高瀬正仁 著)を読みました。『解析概論』で有名な高木貞治先生の評伝です。ほぼ一年前に読んだ随筆集『数学の自由性』に強く感銘を受け、手にした次第。本書で印象に残ったのは次の二つの話です。
- 和算では、まず具体的な問題を解かせ、答えがわかってから、先生が原理的なことを説明するのだそうです。まず一般論を解説してから問題を解かせる洋算(西洋数学)とは逆の教え方で、高木先生は両方の教育を受けたとのこと。答えさえわかれば良いとする昨今の風潮とは別次元の教授法ですね。
- 高木先生には「学生が講義に集中できるのはせいぜい30分」という持論があったようで、講義時間になってもしばらくは控室でお茶を飲んでいた、とのこと。
追記:没後50年が経過したそうで、その著書がインターネット上で復刻されつつあります。