先日苅谷剛彦先生の「知的複眼思考法」の文庫本が生協に並んでいたので,即購入.文庫版の前書きにあった印象的な言葉をご紹介します.
「自分で考えろ」というのはやさしい。「自分で考える力を身につけよう」というだけなら、誰にだっていえる。そういって考える力がつくと思っている人々は、どれだけ考える力を持っているのか。考えるとはどういうことかを知っているのか。本を読みさえすれば、考えることにつながるわけではない。自分で何かを調べさえすれば、考える力が育つわけでもない。ディスカッションやディベートの機会を作れば、自分の考えを伝えられるようになるわけでもない。
調べることをどうすれば考えるというプロセスに組み込んでいけるのか、どのように議論のしかた、本の読み方を工夫すれば、考える力を鍛えていけるのか。そのための具体的な方法を欠いたままであれば、自分で調べたことも情報の焼き直しで終わったり、本を読んでわかったつもり、ディベートしてもその場かぎりの意見表明に終わってしまう。