大学教員の喜び

以前ウェブ上で拝見して感銘を受けた,古在豊樹先生のコラム記事(2011年10月20日付 日本経済新聞夕刊 コラム「あすへの話題」より)をご紹介します.

 大学教員の仕事は、教育、研究、社会貢献、学内や学会の業務など多様である。この多様な業務間に相乗効果を見出す術を身に付けると、こんなに楽しい職業はない。
古典的研究を最新の研究や隣接分野の研究さらには社会問題とも関係付けて講義する過程では自身が多くを学ぶ。新入生向け教養科目、社会人向け講座、市民・農家の方々との会合、企業人向け講演会、ボランティア活動での、ドキリとする質問やハッとする意見に、視野が広がり喜びを感じる。
学生(大学院生)から研究課題の相談を受けて、彼らの興味、特技、問題意識に耳を傾け、専攻分野の課題と結び付けようと苦慮しているうちに、新たな着想を得る。その中で、学生が自分の研究課題に意義、目標および解決方向を見いだせれば、半ば成功である。学会発表や論文投稿の準備過程で学生が身に付けたスキルや自信は、社会人になってから大いに役立つ。この過程で教員も多くを学ぶ。
他方、研究論文の公表は社会的責任を伴うので、厳しいことを学生に言うことになる。その困難を乗り越えて卒業した後に、社会で活躍している様子を知ることは、何物にも代えがたい喜びである。苦言の真意を理解してもらえるのは卒業後になることもあるが、それはそれで楽しい。
若い時に書いた論文が最近になり意外な形で引用されると、時空を超えた研究蓄積のつながりに縁を感じる。そして、当面の研究目的の達成に加えて、その研究成果が、多分野、多文化において利用してもらえるように、可能な限り一般化して書くことが肝要であることを知る。教員の仕事は、深く、楽しく、同時に、大きな責任を伴う。