2021年3月6日(土)にオンラインで開催された標記講演会で,われわれの研究室の成果を発表しました.
- 演題:OpenFOAMに実装された重合格子法による造波抵抗の予測精度
- 著者:後藤啓太(登壇者),中山勝之,大嶋元啓,坂村芳孝
12月に発表した内容をさらに発展させて,運動する物体にはたらく造波抗力の予測精度を検証しました.
2021年3月6日(土)にオンラインで開催された標記講演会で,われわれの研究室の成果を発表しました.
12月に発表した内容をさらに発展させて,運動する物体にはたらく造波抗力の予測精度を検証しました.
先日開催された「プレゼンテーション演習」の合同発表会で,本研究室のプレ配属生が次のような質問を受けていました.
火星の大気密度が小さいのであれば,密度に応じて粘性係数も変化するのでは?
私自身,温度が決まれば気体の粘性係数が決まることは,知識として知っていましたが,密度に対する依存性については意識の外にありました(ウッカリしていました).
理科年表(1)を紐解いても
気体の粘度(粘性係数 著者注)は数十Paより数気圧に至る広い範囲において圧力にはほとんど無関係である.
とは書かれていますが,その理由までは示されていません.
そこで,慌ててVincenti & Krugerのテキスト“Introduction to Physical Gas Dynamics”(2)を確認して整理してみましたので,備忘録として掲載しておきます.
気体の巨視的な特性量(速度,温度,濃度)が空間的に一様でないとき,一様な状態に戻す現象(粘性,熱伝導,拡散)が生じることは経験的によく知られているところです.長時間経つと,最終的に一様な状態に達し,これらの現象は消滅します.
これらの物理現象は,気体を構成する分子のランダムな運動(熱運動)によって運動量やエネルギー,質量が輸送されることで生じるものであり,輸送現象と呼ばれています.巨視的な特性量の空間的な偏りが,分子運動によって輸送される微視的な物理量の流れ(流束)にアンバランスをもたらし,巨視的な特性量の輸送を生み出すわけです.
本稿では気体の粘性についてのみ考えていきますが,この場合考察の対象となるのは気体の速度の非一様性です.例えば,速度の方向成分
が
方向にだけ非一様に分布している場合,
一定となる平面上には速度成分
を一様にする方向に単位面積あたり
の大きさをもつせん断力(せん断応力)が働きます.これはニュートンの粘性法則として知られていて,次式のように表すことができます.
ここで現れたが粘性係数(粘度)と呼ばれる物性値です.次節では,気体分子運動論に基づき,粘性係数が密度や圧力に依らず温度だけで決まることを説明したいと思います.
気体分子がもつ物理量(運動量,エネルギー,質量)の巨視的平均量を考えましょう.ここでは
は
方向にだけ変化するものとします.つまり
図1に示されるように,平面の下側に存在する分子がこの平面を横切るとき,この分子は,最後に他の分子と衝突した場所
でもつ平均量
をもって移動すると考えます.ここで
は平均自由行程
と同程度の大きさをもつものと仮定し,
と表します.ここで,
は1程度の大きさをもつ比例定数です.平面
の上側に存在する分子は,上と同様に考えて,平均量
をもって移動することになります.
また,平面を単位時間・単位面積あたりに横切る平均的な分子数は,に比例するものと考えられます.ここで,
は分子数密度,
はランダムな分子運動の平均速さであり,
で評価されたものです.
以上のことから,軸の正の方向に向かって輸送される,単位時間・単位面積あたりの平均量の流束
は
として計算することができます.ここでは比例定数です.
さらに,を
のまわりでTayler展開して,1次項までを残すと次式が得られます.
ただし,としました.
分子の質量をとすると,式(2)において
とおけば気体分子がもつ
方向の運動量流束が求まります.
ここでは気体の密度です.
次に,Newtonの運動法則
ある時間内に生じた物体の運動量の変化はその間に物体に作用した力積に等しい.
を適用すれば,図2に示すような平面に作用するせん断応力は,この面を単位時間に通過する
方向の運動量流束と等しくなることがわかります.ただし,せん断応力の向きについては,図2に示した平面の場合,
軸の方向を正と定義していますので,この面を通過して流入する正味の運動量が正となる場合に対応しています.一方,前節で定義した運動量流束は
軸の正の向きが正となるように,つまり流出する方向が正となるように定義されていますので,次式のように符号を変更する必要があります.
以上で求めてきた式(1), (3), (4)を比較することで,粘性係数が次のように与えられます.
ここで,平均自由行程は密度に反比例(3)し,熱運動の平均速さが絶対温度の平方根に比例する(4)ことを思い出せば,粘性係数は密度には依存せず,温度のみの関数となることが理解できます.
3年生の授業(「プレゼンテーション演習」合同発表会)での質問をきっかけにして,気体の粘性係数が密度に依存しないことを気体分子運動論的に改めて考えてみました.以上の内容が記載されていたVincentiとKrugerのテキストは研究室の輪読で何度か読んでいたのですが,最近取り上げることはなかったので,完全に記憶から抹消されていました.やはり定期的に読み返す必要がありますね.
なお,同書によれば,Maxwellが1860年にこの関係を発見したとき,あまりに驚いて,彼自身が実験で確認するまでの間,眠れなかったとのことです.
2020年12月10日(木)(9〜12時)に標記講座が本学(L205会議室)で開催されました.
本講座は,高大連携教育の一環として毎年開催しているもので,今年で8回目となります.受講生は小杉高校の2年生(19名)で,11月16日(月)に小杉高校で行った授業と今回本学で実施した授業との2コマで構成される講座です.
本講座では,スターリングエンジンの動作原理を学んでもらった後に,エンジン模型の組み立てと動作実験を行いました.例年そうなのですが,組み立ててからすぐに動くことはほとんどなくて,皆さんとても苦労していました.それでも最後まで粘り強く取り組んでいる姿勢に,いつも感動させてもらっています(ありがとうございます!).
最後に実施したコンテストの優勝タイムは,以下の通りです.優勝されたチームの皆さん,おめでとうございます.
われわれの研究成果を2020年9月28日(月)にオンラインで開催された標記講演会で発表しました.オンライン会議には慣れているつもりでしたが,CiscoのWebexによる講演は初めてで,冷や汗をかきながら,なんとか発表を終えることができました.
講演題目:衝撃波との衝突により誘起された直方体形状物体の6自由度運動の数値シミュレーション
著者:坂村芳孝(発表者),中山勝之,大嶋元啓,後藤啓太
某サブスク動画配信サービスで,映画「ファーストマン」を観ました.これは,月面に立った最初の人であるニール・アームストロング(1930-2012)の伝記(First Man: The Life of Neil A. Armstrong)を原作とする映画で,彼がX-15のテストパイロットであった1961年から月面に降り立つ1969年までの出来事が描かれています.
本作では,彼や同僚(バズ・オルドリンなど)の人となりが丁寧描かれていて,彼等に対する印象が大きく変わりました(直接会ったことがないので,本当のところは確かめようがありませんが).
この映画で特に印象的だったのが映像です.光と影の使い方が絶妙で,記憶に残るシーンが多くありました.後期開講科目の「プレゼン演習」の参考にもなりそうです.
現在アメリカでは2024年までに人類を再び月面に送るArtemis計画が進められています.月面からの実況中継は8K映像になるのでしょうか?
残念ながら新型コロナウィルスの感染拡大を受けて中止となりましたが,日本機械学会北陸信越支部第57期総会・講演会および日本機械学会北陸信越学生会第49回学生員卒業研究発表講演会の講演論文が公開されました.
【日本機械学会北陸信越学生会第49回学生員卒業研究発表講演会】
【日本機械学会北陸信越支部第57期総会・講演会】