原田マハ著「楽園のカンヴァス」を読みました.

 素朴派の巨匠アンリ・ルソーの名作『夢』(下図参照)と,それに酷似した架空の作品『夢をみた』をめぐって繰り広げられる美術品鑑定ミステリーです.本サイトで原田氏の作品を紹介するのは2度目(以前紹介したものは「翼をください」)になりますが,前作同様,史実とフィクションとが入り混じった,魅力的なエンターテイメント作品となっています.
 本書を読むまですっかり忘れていましたが,学生時代にパリのオルセー美術館でルソーの『戦争』を観たたことがあります.大きなカンヴァスを時間を忘れて眺めていたことを思い出しました.いつの日か,本作で取り上げられた『夢』も鑑賞してみたいと思っています.
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アンリ・ルソー 『夢』(1910年)

土屋嘉男著「クロサワさーん!」を読みました.

 学内教職員の有志で連載している書評ブログに投稿したものを再掲します.この本は,数年前にラジオ番組「武田鉄矢の今朝の三枚おろし」の中で紹介されていたときに購入したものですが,熊本出張の際に読み直してみました.また『七人の侍』を観たくなってきました…

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藤本とし著「地面の底が抜けたんです」

以前にご紹介した学内書評ブログに投稿したものを再掲します.

学生時代,大学の正門前の古本屋によく立ち寄っていた.たまに掘り出しものもあって,見つけたときの喜びは何物にも代えがたいものがあった(戦前に出版されたE. ゼンガー著「ロケット航空工学」を入手したのもこの古本屋であった).

本書は,その古本屋で見つけて購入したもので,何度も読み返している愛読書である.さすがに20年以上経つと背表紙も破れ,ぼろぼろになってきたので,昨年2冊目をネットで購入した(送料込みで500円程,良い時代になったものだ…).

本書は2部構成で,前半にエッセイが,後半に口述筆記による自伝「地面の底がぬけたんです」が収められている.

著者の知性と感性,ユーモアに彩られたエッセイは,どれも真に素晴らしいが,これらを読み進めるうちに,著者の壮絶な人生が徐々に明らかになってくる.

藤本氏は18歳でハンセン病に罹り,47歳で失明した.世間から隔離され,家族,光,手足の指を失った絶望の中で彼女が見つけた「光」が何だったのか,是非手にとって確かめていただきたいと思い,紹介させていただいた.

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タチアナ・ド・ロネ著「サラの鍵」

現在,学内の有志による書評ブログの準備が進められています.学内限定なので,そこに寄稿したものを再掲します.

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原研哉著「デザインのめざめ」読了

2016年元日に読みました.

簡潔でテンポの良い文章に,著者のデザインセンスが光ります.

人類がこれまで創造してきた道具を「こん棒」系と「うつわ」系に分類する著者の卓見に強い感銘を受けました.

森田真生氏による解説文もお勧めです.

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J. S. ミル著「自由論」読了

生協で見つけたJ. S. ミル著(斉藤悦則訳)「自由論」(光文社古典新訳文庫 2012年)を読みました.

意見の多様性こそ有益だとするミルの主張に禿同.150年前に彼が本書に残した言葉は,今もその価値を失っていません.

もしも常識的な意見に反対する人がいたら,あるいは,法律や世論が許せばそうしたいと思っている人がいたら,われわれはそういう人がいることに感謝しよう.そして,心を開いて彼らの言うことを聞こう.自分たちの信念を確かなもの,力強いものにしたいのであれば,われわれがひどく苦労してやらねばならない作業を,かわりにやってくれる人がいることを喜ぼう.

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小平邦彦著「ボクは算数しか出来なかった」読了

数学者・小平邦彦先生の自伝「ボクは算数しか出来なかった」(岩波現代文庫)を読みました.ユーモア溢れる内容で,一気に読み終えました.

プリンストン高級研究所に滞在中の,物理学者・朝永振一郎先生とのやりとりは特に面白かったです.もちろんお会いしたことはありませんが,お二人の人柄が滲み出ているようでした.

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エレーヌ・フォックス著「脳科学は人格を変えられるのか?」読了。

脳科学の進歩は目覚ましい.以前は脳細胞が一旦死ぬと元に戻ることはないと信じられてきたが,年を取っても脳内の神経細胞が新たに作られるという科学的根拠があるようだ.もの忘れを年齢だけのせいにはできない.

本書では,神経学者・心理学者である著者が「どうして楽天的な人と悲観的な人がいるのか?両者の違いは何か?」という疑問に脳科学的・遺伝学的な答えを与えようとしている.これ自体興味深い内容だが,さらに印象的だったのは,ものごとを前向きに捉えることが人生において如何に大切かということを科学的に分析している点だ.特に記憶に残った文章を以下でご紹介したい.

人はどんな遺伝子の構造をもっていても,どんな出来事に見舞われても,それで人生の道筋が決まるわけではない.

「人生の舵は自分が握っている」という感覚が逆境に屈しない精神を育む.

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